Gearとしてのワードローブ
さて、本日は。
私が長年愛用しているエンジニアブーツを3足ご紹介したいと思う。
「8月の真夏にブーツの記事?」
そう思われる方も多いかもしれない。
しかし私にとって、夏こそ革製品を見直す大切な季節なのである。
……まあ、履けないし、着ることできないし。革製品。
これは本音。笑
エアコンによる乾燥、強い紫外線、高温多湿。
革にとって、夏は決して優しい季節ではないことは確か。
だからこそ、この時期に一度状態を確認し、必要な手入れをしてやる。
そうすることで、また晩秋から気持ちよく履けるのである。
私は古着屋という仕事を30年以上続けてきた。
これまで数え切れないほどのブーツを見て、履いて、そして販売してきた。
RED WING、WESCO、WHITE’S、CHIPPEWA、VIBERG、BUCO……。
ヴィンテージから現行品まで、本当にいろいろなブーツと出会ってきた。
そんな中で、売らずに自分の手元へ残したブーツたちもいる。
歴史的価値があるから?
値段が高いから?
もちろん、それも多少はある。
しかし、それだけではない。
長く履いているブーツには、何とも言葉では説明しにくい「何か」が宿ってくるのである。
鈍く光る革。
無数のキズ。
自分の足に合わせて刻まれた履きジワ。
男子の心をくすぐる、黒光りした“何か”。笑
何年履いても飽きない。
履くたびに「私の跡」が刻まれていく。
気づけば、単なる履き物ではなく、共に歳を重ねてきた相棒のような存在になっている。
今回は、そんな私のブーツたちの中から**「エンジニアブーツ」3足**をご紹介しよう。
① BUCO/Horsehide エンジニアブーツ

2006年頃、新品で購入した一足。
価格は当時約8万円。
決して安い買い物ではなかった。
それでも、一目惚れして買った記憶がある。
当時の私は「良質なエンジニアブーツが欲しい」と、あちこち探し回っていた。
いろいろなブーツを見た末に行き着いたのが、こいつだった。
最大の魅力は、やはりホースハイド(馬革)。
きめ細かな革の表情と、履き込むほどにはっきり現れてくる美しい履きジワ。
A-2などのフライトジャケットでも感じられる、ホースハイドならではの魅力である。
ただし、新品の頃は硬い。
とにかく硬い。
そして足が痛い。笑
そこは昭和生まれらしく、
「努力と根性」
で乗り切った。
今ならそんな履き方を人には勧めないが。笑
年月を重ねるにつれ、革は少しずつしなやかになり、私の足の形に馴染んでいった。
ソールはキャッツポウ。
そして驚くことに、購入から約20年経った現在まで一度もソール交換をしていない。
「20年も履いているのに?」
と思われるかもしれない。
理由は簡単。
こいつは主にバイク専用ブーツだからである。
歩き回る用途ではない。
その代わり、扱いはなかなか手荒い。
バイクに乗れば、当然キズも付く。
シフト操作の跡も残る。
しかし、それでいい。
ブーツはキズが付く履き物。
バイクはキズが付く乗り物。
昔『こち亀』に登場した本田のお父上も、そんなことを言っていた……ような気がする。笑
無数のキズはある。
それでもメンテナンスだけは怠らない。
大切にするというのは、傷を付けないことではない。
ちゃんと使って、ちゃんと手入れすること。
私はそう思っている。
本当に価値のあるものは、使ってこそナンボ。
20年近く経った今でも、こいつは私の現役の相棒である。
中古市場でも状態によっては高値で見かけるようになった。
でも、私にとっての価値は市場価格とは少し違う。
20年間一緒に過ごしてきた時間。
そこに値札は付けられない。





② Keystone エンジニアブーツ by 福禄寿

続いては、シューリペアショップ福禄寿が製作したオリジナルブーツ「Keystone」。
他のブーツのソール交換で福禄寿さんを訪れた際、店主の奥山さんから紹介された一足だった。
そして私は――
一目惚れ。
男の子、即決。笑
ブラウンとブラックのコンビカラー。
サイズは9。
価格は当時6万円弱だった……と思う。
今ではもう少し高くなっているかもしれない。
物価高だからね。😤
このブーツは、仕事でもかなり履いた。
一般的なエンジニアブーツというと、ゴツくて無骨なイメージが強い。
しかしKeystoneは少し違う。
トゥが細く、どちらかといえばペコスブーツにも通じるスマートなシルエット。
これが実にジェントルなのである。
大人の色気がプンプンする。
デニムはもちろん、ワークパンツにもチノにも合う。
古着屋時代、
「今日、何履こうかな……」
と迷った日は、だいたいこいつを選んでおけば間違いなかった。
主張はある。
でも出しゃばらない。
どんな服装にも自然と溶け込んでくれる。
流通量が多いブーツではないため、中古市場でも見かける機会はそれほど多くない。
新品で相談できる場合もあると思うので、気になる諸兄は福禄寿へ問い合わせてみてほしい。
私にとっては、まさに知る人ぞ知る名作。
そして奥山氏は、ある種の天才だと思っている。





③ WESCO/Patrol BOSS

今回最後に紹介するのは、1990〜2000年代頃と思われるWESCO。
細部を見るとWestern Bossにも見えるが、私の見立てではおそらくPatrol Boss。
そして、このブーツ。
実は店で買ったものではない。
私がアメリカから仕入れてきた古着の中から出てきた。笑
当時、弊社が輸入していた古着のベール。
その中を仕分けしていると――
「ん?」
出てきたのである。
WESCOが。
……役得、役得。笑
もちろん、ちゃんと購入分として会社には還元している。
誰かがアメリカで何年も履いていたのだろう。
そして海を渡り、古着の山に紛れ込み、縁あって私のところへやってきた。
こういう出会いがあるから、古着屋という仕事は面白かった。
サイズは10。
数字だけ見ると少し大きめだが、実際に履くと妙にしっくりくる。
外側のボリュームに比べて内部はタイトで、厚手の靴下を履くとちょうどいい。
そして何より――
革が分厚い。
とにかく分厚い。
さらにソールはVibram #100。
革は分厚い。
ソールもゴツい。
ステッチダウン製法。
最強か。笑
シャフトにはエンボスロゴも入っている。
とにかく頑丈。
約15年間履いているが、まだまだ現役である。
こちらもBUCO同様、バイクで履くことが多い。
最近は90年代頃のWESCOにもヴィンテージとしての評価が出てきたようだが、こいつも売る予定はない。
まだまだ働いてもらおう。笑





元古着屋だから思うこと
古着の世界に「正解」はない。
ブーツもスニーカーも、たぶん同じだ。
新品には新品の良さがある。
しかし、何十年も使われてきたものには、新品では絶対に出せない魅力がある。
キズ。
色落ち。
履きジワ。
ソールの減り。
普通なら「劣化」と呼ばれるものが、革製品ではその人だけの歴史になる。
だから私は、ブーツをピカピカのまま保管しておきたいとは思わない。
履く。
汚れる。
キズが付く。
そして手入れする。
また履く。
それでいい。
手入れの方法にも、人それぞれ考え方がある。
オイルの種類も違えば、頻度も違う。
そこに絶対的な正解があるとは、私は思っていない。
ただ、一つだけ必要なものがあるとすれば――
「愛」である。笑
「こいつとは、この先も一緒に歩いていく」
そう決めたなら、ちゃんと使って、ちゃんと手入れする。
そうすれば革は、ちゃんと応えてくれる。
20年後。
30年後。
新品の頃より格好良くなっている可能性すらある。
それこそが、革製品の面白さではないだろうか。
あなたも、素敵なブーツライフを。
まだまだやるぜ!ブーツ図鑑 #2【予告】
もちろん、私のブーツはこれだけではない。
30年以上古着屋をやってきたのである。
まだまだ出てくる。笑
RED WING。
WHITE’S。
WESCO。
VIBERG。
そして、知る人ぞ知る隠れた名品たち。
次回以降も、一足ずつ紹介していきたいと思う。
ただし、単なるスペック紹介にはしたくない。
いつ手に入れたのか。
なぜ買ったのか。
どんな服に合わせてきたのか。
そして、何年履いてどう変わったのか。
ブーツのスペックではなく、ブーツと人間の物語を書いていきたい。
古いものには、人や物の数だけ物語がある。
そして、その物語は次の持ち主へ受け継がれ、また続きを刻んでいく。
私のブーツたちも、いつか誰かのところへ旅立つのだろう。
というか、すでに相当数が長男のところへ旅立っている。笑
次男は今どきのスタイルなので、どうもあまり興味がないらしい。
となると――
長男よ。あとは頼んだ。笑
まあ、それまではまだまだ私が履く。
これから先もブーツたちと一緒に歳を重ねながら、このブログで少しずつ紹介していこうと思う。
ブーツ好きの皆様。
ブーツ図鑑 #2で、またお会いしましょう。👍

今回紹介したブーツたち
- BUCO Horsehide エンジニアブーツ
- Keystone エンジニアブーツ(福禄寿オリジナル)
- WESCO Patrol BOSS(90〜00年代頃)
どれも私の人生のそばにいてくれた、大切な相棒たち。
そして、まだまだ現役である。