さて、久しぶりのギターブログである。
今回紹介するのは、Spirit by STEINBERGER GT-PRO Deluxe。白い小さなボディに、ヘッドのない、少し変わった姿のギターだ。
これはもう、ホントに遊びで買った一本である。
買ったときの値段は、確か35,000円くらいだったと思うが、いつ買ったのかは、すっかり忘れてしまった。ただ、なぜこの形が気になったのかは覚えている。
話は、私の青春時代まで戻る。

スタインバーガーで思い出すあの漫画
私が若い頃(おっさん特有の言い回しだな…笑)、スタインバーガーのベースが妙に格好よく見えた時があった。
普通のベースにあるはずのヘッドがない。ボディも小さな四角形。必要なところだけを残し、あとは全部そぎ落としたソリッドな姿。チューニングさえ、どうやるのか。当時の私は知りもしなかった。
そして、そのベースと共に思い出すのが、上條淳士氏の漫画『TO-Y(トーイ)』だ。
1985年に『週刊少年サンデー』で連載が始まった作品で、主人公は藤井冬威、通称トーイ。バンド「GASP」のボーカルとして登場し、やがて芸能界へと足を踏み入れていく。
バンドの少年が、音楽の世界で上を目指していく。そう書けば王道の物語なのだが、当時の私にとっては、とにかくスマートで説明的でなく、格好がよかった。
細く、すっきりした画のライン。それなのに、話の中身はなかなかにしてタイト。
音楽だけでは済まない芸能界の事情や、人間関係。そこを、気まぐれで、どこかつかみどころのないトーイが通り抜けていく。そんなシニカルな空気も含めて、私の青春期に最も好きだった漫画のひとつである。
漫画なのに、まさに『音』が聞こえてきそうなほどであった。
トーイはGASPを離れ、哀川陽司のバックバンド「EDGE」に加入する。そこでベースを弾いていた、というところまでは、今回あらためて調べて確認できた。気になる読者諸兄はご一読あれ。
そして私の記憶の中では、トーイがスタインバーガーのベースを持っていたのである。
その場面の楽器までは、しっかり確認できていないのだが、そこは、ひとまず私の記憶として受け取っていただきたい。ただ、あの四角くてヘッドのない姿を見ると、今も『TO-Y』を思い出すのは確かなのだ。
少年時代、私でいえば中学生の頃に格好いいと思って見ていたものは、案外しぶとく記憶に残っている。
憧れはベース。でも、買ったのはギター
当時のスタインバーガーといえば、グラファイトだったか、カーボンだったか……。
このあたりは、AI従業員のあいさんに調べてもらった。※名前の付け方がベタですまぬ。
初期の代表的なモデルでは、炭素繊維などで樹脂を補強した複合素材が使われていたそうだ。昔の私が覚えていた「木ではないスタインバーガー」という印象は、どうやら大きくは外れていなかったらしい。
ただし、スタインバーガーが全部その素材だったわけではなく、後には木製ボディのモデルも登場している。
そして、今回のSpiritは木製のシリーズ。現行GT-PRO Deluxeの公式仕様では、バスウッドのボディに、3ピースのハードメイプルネックとなっている。私の一本は購入年を確認できていないので、同じ木材かどうかまでは断定しないでおく。
まぁ、普段から木のギターばかり弾いている私には、その方が馴染みやすい気もするし、素材の違いを語り切れる耳があるかどうかは、また別の話だ。笑
そもそも、憧れたからといってベースを買っても、私はベーシストではない。
我が家には長男のベースがある。それで充分だ。そうでなくても、現在は実家で飾りになっている時間が長いのである。
そのあたりの事情は、以前書いた長男が実家へ置いていったFenderのPrecision Bassの話に詳しく書いている。で、父は弾くより、管理する側になっている。笑
ならば、あの姿をギターで楽しもう。
そんな気持ちで買ったのが、このSpiritだった。
やはり、大正解。笑
PUは3つあるが使用はほぼ2つ
ピックアップは、フロントからハムバッカー、シングルコイル、ハムバッカーのH-S-H配列。切り替えは5ウェイである。
選択肢はいろいろある。あるのだが、私は真ん中のシングルをほとんど使わない。
ストラトのようにハーフトーンも楽しむかと思いきや、私の好みや普段のアンプ設定では、どうにも使いどころがしっくりこない。
結果、リアorフロント。
見た目は近未来的なのに、私の使い方は、ほぼレスポール状態である。
もちろん、ハムバッカーだからハーフトーンが使えない、という話ではない。単に、このギターで私が気持ちよく弾ける場所が、その両端だったということだ。
音の印象は、非常にマイルド。
アンプのセッティングにもよるが、私にはレスポールに近い感覚で音を作れる。ただ、手持ちのギブソンで感じるような荒々しさとは少し違い、もう少しまとまりのあるジェントルな音に感じる。
歯切れよくコードを分離させるより、単音でフレーズを弾いたり、パワーコードを鳴らしたりする方が、私は楽しい。
このへんは、あくまで私の感想である。同じ一本でも、人が変われば違う弾き方になるだろう。

アームは立派だがあまり使わない
ブリッジには、R-Tremというロック機構付きのトレモロが付いている。
見た目からフロイドローズのようなものを連想するが、別の仕組みだ。ストラトのシンクロナイズド・トレモロとも、そのまま同じものではない。
アームを使って音程を上下させられ、ロックすれば固定ブリッジのようにも使える。
使いやすい仕組みだとは思う。ただ、私の普段の弾き方からすると、ここまで立派なものが必要だったかは、少々怪しい。
ギターの方が、私よりいろいろできそうなのである。
専用弦を普通の弦で、という解決策
そして、このギターで少し変わっているのが使用弦だ。
標準では、両端にボールエンドの付いた「ダブルボールエンド弦」を使うようになっている。ヘッド側に普通のペグがなく、ボディの末端にあるノブでチューニングする仕組みであるからだ。
そういえばダダリオからも出ていたような……と話したら、こちらもあいさんが確認してくれた。ESXL110やESXL120というダブルボールエンドのギター弦が、ちゃんとある。
ただ、私にとって問題はお値段。
以前見たときには、普段買っている弦より、ずいぶん高く感じた。通常の弦の3倍くらい、という印象まで残っている。これは当時の私の感覚で、今の価格を比較した数字ではないことを記しておく。
私は、弦にはあまりお金をかけたくない。その代わり、こまめに交換したいタイプである。普段の定番は、フェンダーの3パック、超低コストだ。
そこで助かっているのが、この一本を買ったときに付いてきた、普通の弦を使うためのアダプターである。
ネックの先端に取り付けられていて、弦のボールエンドはブリッジ側へ。反対の端をアダプターへ通し、六角レンチでイモネジを締めて固定する。あとは、ボディ末端のノブでチューニングすればいい。
これなら、いつもの弦が使える。
ただし、このアダプターは公式では別売アクセサリーとして案内されている。私の購入時には付いていたが、どの販売品にも標準で付属するとは限らないのでご注意を。
切った弦の先端が指に引っかかり、「あ、痛っ」となることはたまにあるので、その部分には気をつけたい。
そこを除けば、実にありがたい部品だ。気軽に遊ぶギターは、弦交換も気軽な方が、私には合っている。

小さいのに、感覚はいつものギター
とにかく、このギターは場所を取らない。
ヘッドがなく、ボディも小さい。ただし、弦長まで短いミニギターではない。GT-PRO Deluxeは25.5インチスケールで、24フレット。見た目は小さくても、左手の感覚は普段のギターから大きく離れない。
ネックも私には太すぎず、薄すぎず、実に弾きやすい。
指板のラディアスがレスポールと同じくらいなのか、とも思ったが、現行公式の指板Rは14Rとのこと。数字だけで手持ちの一本と同じとは言えないので、ここは「私の手には馴染む」で充分だろう。
側面には、座って弾くときに太ももへ載せる、折りたたみ式のレッグレストもある。
小さくするだけでなく、弾くときのこともちゃんと考えてある。こういう工夫は好きだ。
青春時代が今は枕元にある
現在、このSpiritは私のベッドサイドに置いてある。
ふと思い出したフレーズを、ベッドの上で少し弾く。大きなギターを構えるほどでもない時間に、ちょうどいい。なんて無精なおっさんだ。笑
これを持って、どこかのステージに立つ予定は、今のところない。基本はおうちギターだ。
ただ、小さなアンプと一緒なら、ちょっとした飲み会へ持っていくのもあり。
飲み会に持ち出す小さなギターといえば、Taylor GS Mini-e Koaの話も以前書いている。アコギとエレキで勝手は違うが、「気軽に持ち出せる」というのは、楽器の立派な魅力だと思う。

私の記憶の中で、漫画の少年が持っていた、あの突飛な形のベース。
その姿に想い焦がれて買ったギターが、今は50代のおっさんの枕元で、思い出したフレーズに付き合ってくれている。
ずいぶん落ち着いた活躍の場になったものだが、今の私には、このくらいがちょうどいい。
我が家には、こういう遊びのギターがほかにもある。以前紹介したFERNANDES ZO-3ZWも、その一本だ。
立派なギターを、気合いを入れて弾く時間もいい。手の届くところにある小さなギターを、何となく弾く時間もいい。
遊びで買った一本が、今もしっかり、ちゃんと遊び相手になってくれている。
35,000円くらいだった、という曖昧な記憶はさておき。なかなか、いい買い物だったと思う。
