ずっと迷っていた。
さして場所を取るわけでもない。でも、頻繁に乗るわけでもない。
我が家のモンキー50・スペンサーモデルを、売るか、残すか。
ガレージに置いてある姿を見ると「やっぱりいいな」と思う。かといって、最後にいつ乗ったかを考えると、少し言葉に詰まる。
そんなことを繰り返していたが、とうとう手放すことにした。
長男と同じ、2005年生まれ
このモンキーは2005年製。我が家の長男と同い年である。
私が引き取りに行ったときには、赤ちゃんだった長男も車に乗っていた。
当の本人は、もちろん覚えていないだろう。
でも私は覚えている。小さな息子を乗せて、小さなバイクを迎えに行った日のことを。
こういう思い出があるから、ただの「乗らなくなったバイク」としては片づけられなかった。

走行距離17kmの理由
モンキーを買ったのは2006年。価格は17万円だった。
そのときの走行距離が、なんと17km。
「本当に?」「メーターを交換したんじゃないの?」
そう思われても仕方ない数字だが、購入時に聞いた話には理由があった。
最初に新車で買った大学生が、自宅へ乗って帰ったところ、お父上から「バイクなんてダメだ!」と叱られたそうなのだ。
その結果、泣く泣くバイクショップへ戻すことに。
自宅と店を往復した距離が、約17kmだったという。
真相をその場で見ていたわけではないが、店でこの話を聞いた私は、ずいぶん変わった縁に驚いた。
ほとんど走っていないモンキーと、赤ちゃんだった長男。
あの日から、我が家での付き合いが始まった。
17万円で迎えて、24万円で送り出した
それから約20年。
たくさん走ったかと聞かれると、そこは少々申し訳ない。走行距離は、あまり伸びなかった。
それでも、ガレージにいるだけで嬉しいバイクだった。磨いたり、眺めたり、たまに乗ったり。「乗る」以外の時間も含めて楽しませてもらったと思う。
今回、買い取ってくれたのはバイク王。査定額は24万円だった。
2006年に17万円で買い、約20年後に24万円で手放したことになる。
もちろん、税金や保険、整備にかけたお金まで含めて儲かったわけではない。それでも、この歳月を一緒に過ごしたバイクに24万円の値が付いたのは、素直に嬉しい。
担当のお兄さんも「これは売れますよ!」と、元気よく引き取っていった。
こちらは嬉しいやら、寂しいやら。
ガレージからバイクが消えた
私はこれまで、トライアンフのボンネビルやボバー、カワサキのZ1300やW650、ヤマハのV-max、ベスパ50Sなど、いろいろなバイクに乗ってきた。
そこに最後まで残っていたのが、このモンキーだった。
そして今回の売却で、所有するバイクは0台に。
ガレージを開けると、なんだか静かである。
「何か忘れ物をしているような……」
いや、忘れ物ではない。バイクがないのだ。チャリンコだけ。笑
場所は少し広くなった。なのに、見慣れた小さな姿がないだけで、ずいぶん景色が変わるものだ。
頭に浮かんでは消えるモンキー125
売却代金は24万円。
これを見て、頭の中の困った私がささやく。
「少し足せば、モンキー125が買える…」
現在のモンキー125は、メーカー希望小売価格が49万5,000円。登録などに伴う費用は別にかかる。赤い車体を見ると、やっぱりいいなと思ってしまう。※少しではなかった…。
「24万円あるから、26万足せば買えるじゃないか」という私と、「待て待て。50ccにもあまり乗らなかっただろう。本当に乗るのか?しかも26万足すって!笑」という私が、頭の中でどつき漫才を始める。
50ccのモンキーと125は、見た目には通じるものがあっても、乗り方や使い道は同じではないだろう。
だからこそ気になる。でも、だからこそ即決もしない。
ガレージが空いた途端に次を探し始めるあたり、私はまだまだバイクが好きらしい。笑

後日、思わぬ場所で再会した
モンキーを送り出してしばらくした頃、何気なく中古車情報を見ていた。
すると、見覚えのある車体が目に入った。
「あれ? これ、うちのモンキーじゃないか?」
画面をよく見ると、やっぱりそうだ。
つい先日、24万円で送り出したあの子が、店頭に並んでいた。
販売価格、49万円。
「おお……立派になったな、お前」
思わず画面に向かって声をかけた。
同時に、心の中では「おい、にいちゃん!」とも言っていた。笑
もちろん、24万円の買取価格と49万円の販売価格を、そのままお店の利益として比べることはできない。整備や販売にかかる費用もあるし、何より49万円は売れた金額ではなく、付けられた値札だ。
私は24万円という金額に納得して手放した。不満があるわけではない。
それでも、よその店の売り場で、倍以上の値札を付けた我が子を見つけたら、ツッコミのひとつくらいは許してほしい。笑

ありがとう、モンキー50
赤ちゃんだった長男と一緒に迎えに行ったモンキー。
長男は大きくなり、家を出て大学へ行った。そして同い年のモンキーも、我が家を旅立った。
こうして並べてみると、ずいぶん長い時間がたったのだと思う。
約20年間、楽しませてくれてありがとう。
次のオーナーにも、大切に乗ってもらえたら嬉しい。
さて、私はというと、今日も少し広くなったガレージを眺めている。
「モンキー125、買っちゃ……」
「だから、まず本当に乗るのか考えろって!」
頭の中のどつき漫才は、まだ終わりそうにない。笑