沖縄珍道中、4日目。
10月4日は、午前中をゆっくり過ごし、11時ごろから長男と二人で出かけた。
車で向かったのは、沖縄の楽器、三線を扱うお店である。
長男はベースやピアノを弾くのだが、沖縄三線も弾ける。
息子がいろいろな楽器を楽しんでいる姿を見るのは、父としてもうれしい。
ギターが弾ける私も、少し三線に興味があるが、これ以上楽器は増やせない。笑
値段よりも音に驚いた
お店は、なかなかマニアックな通りにあった。
ギター好きの私の感覚で言えば、マスタービルダーの手による楽器を何本も扱っているようなお店である。そんなお店が、路地裏にあったのだ。
店内には、所狭しと三線が並んでいる。その中には、110万円という値札の付いたものもあった。職人さんのこだわりが詰まった一本なのだろう。
なるほど。
楽器の世界は、ギターも三線も、店の奥へ進むと急に財布の中身がついてこなくなるのも一緒か。笑
そんな中、お店の方のご好意で、長男が80万円の三線を試奏させていただいた。
この対応が、本当にありがたかった。
とても優しく接してくださり、息子の演奏を横で見ている私まで、気持ちよく過ごさせていただいた。
そして、その三線の音が……すごいのである。
まず、とにかく音量に驚いた。
自宅で思い切り鳴らしたら、家の中だけでは収まらないのではないか。大きな会場でも響きそうだと感じるほど、よく鳴る。
ただ、大きな音が出るだけではない。
私が何より驚いたのは、音色に気品があることだった。
うまく言葉にするのは難しいのだが、ずっと聴いていたくなるし、弾く人なら、ずっと弾いていたくなるのだろうと思える音だった。実際、後で長男に聞いたら、「ずっと弾いていたい」と言っていた。
私も長男の横で三線の音色を聴きながら、すっかり感心してしまった。
もちろん、今の長男が買えるものではない。
そして私も、買ってやるつもりはない。笑
ただ、ひとつのことを続けていけば、いつかこういう楽器が欲しくなる気持ちはよく分かる。
ギターを長く弾いてきた父としては、そこだけは理解できるのである。
そこで、一言だけ添えておいた。
「頑張って働きなさい」
良い楽器との出会いが、将来の仕事への意欲につながるのなら、それもまた良いことだろう。
父からの援助については、ひとまず話題にしない方向である。笑
やちむん通りの沖縄そばと喫茶店
次に向かったのは、国際通りの近くにある、やちむん通り。
※やちむんとは、焼き物のこと。まさに焼き物屋さんが多く軒を連ねる通りだ。
そこで沖縄そばのお店と、喫茶店に立ち寄った。
喫茶店の名前は、うちなー茶屋ぶくぶく。
やちむん通りでひと息つくのに、心地よいお店だった。

今日も感じたのだが、沖縄は、お店の人とのやり取りが心に残る。
もちろん、どのお店も一緒だと言うつもりはない。
ただ、今回入った沖縄そば屋さんも喫茶店も、とても店員さんの愛想がよく、落ち着いて過ごせるお店だった。
沖縄そばの女性店員さんも、喫茶店のマスターも、気さくに話しかけてくださる、とても感じのよい方たちである。
どうも、今回出会った方たちは、人との距離を縮めるのが上手なようだ。元経営者の私も、感心してしまう。
こういう方がいるお店は、それだけでまた来たくなる。
そして、喫茶店で接客してくださった女性も、ショートカットがよくお似合いの、とても素敵な方だった。(とっても美人さんです)
笑顔で対応していただけると、こちらまで気持ちがほぐれる。
ありがたい。うれしい。
旅の記憶というのは、食べたものや見た景色だけでなく、こういう人とのやり取りも残っていくものなのだろう。
私たちはしばしの涼をとり、やちむん通りを後にした。

第30回宜野湾市青年エイサー祭り
一度宿へ戻り、少し体勢を整えて、夕方5時に長男と再集合。
二人で向かったのは、第30回宜野湾市青年エイサー祭りである。

エイサーをこうしてじっくり見るのは、ほぼほぼ初めてだった。
太鼓の音、歌声、踊り、それはそれは、素晴らしかった。
長男からは、エイサーとお盆との関わりも教えてもらった。
沖縄では、旧盆にご先祖様を迎え、そして送り出す。その行事と深く結びついているのがエイサーなのだという。
もともとは、お盆の最終日に、ご先祖様を送り出すために踊られてきたものだそうだ。
なるほど。
目の前の迫力ある演舞が、地域の暮らしや祈りとつながっていると思うと、見え方も少し変わってくる。
やはり、地域に根ざしたものは強い。
そう感じたのは、演舞を見ている人たちの様子からも伺えた。
指笛を鳴らし、足でリズムを取る人。
歌に合わせて、一緒に口ずさんだり、踊ったりする人。
そして、お酒を楽しむ人たち。
太鼓の音を聴きながら飲む一杯は、さぞうまいのだろう。
……そこは、私もよく分かる。笑
見に来ている人たちは、自然とその輪の中へ入っている。
私はというと、演舞に感心しながらも、ついつい会場の人たちへ目が向いてしまう。
沖縄のバスでもそうだったが、どうも私は、旅先で暮らしている人を見るのが好きらしい。
「バスの車内放送が全くわからないが、沖縄の言葉は優しくて大好きな話」の記事はこちら。
英才教育、いや、エイサー教育
会場には家族連れも多く、芝生にシートを敷き、その上で食べたり飲んだりしながら、エイサーを楽しんでいた。
小さな子どもが、自分の太鼓を持ってきている。いわば「マイ太鼓」。
演舞に合わせて、その太鼓をたたきながら踊っているのだ。
これには、思わず目が細くなった。いやはや英才教育だなぁ、と。
私の普段の暮らしでは、なかなか見かけない光景である。
もちろん、ほかの地域にも祭りはあり、そういう光景も見る機会はあるのだろうが、少なくとも私にはとても新鮮だった。
そして、その横で、もうひとつ目に留まったことがある。
お父さんとお母さんがお酒を楽しみながら子どもたちにご飯を食べさせていて、そのすぐそばで赤ちゃんが寝ているのである。
あの、太鼓の音が鳴り響く中で。
……寝ている。
これはもう、英才教育を通り越し、エイサー教育である。笑
太鼓の音が、特別なイベントの音ではなく、家族と過ごす時間の音になっている。(いや、ホント、腹に響くほどの音なんよ)
小さなころから、こうして日常として聴いて育つのだろう。
「伝統を受け継ぐ」と言うと、何か大きな役目のように感じるけれど、目の前では、それがもっと自然に続いているように見えた。
家族でご飯を食べ、太鼓をたたいて遊び、そして歌う。
眠くなったら寝る。
その暮らしの中に、エイサーが自然に存在する。
身体に染み込むというのは、こういうことなのかもしれない。もはやDNAレベルの話なのか?笑
演舞している皆さんの姿も、本当に素晴らしかった。大太鼓、締め太鼓、旗頭、女踊り。それぞれに迫力や美しさがあった。
でも、私の心に残ったのは、会場で過ごす家族の姿でもあった。
せっかく来たのだから、もっと演舞に集中しなさいと言われそうではあるが、こればかりは仕方がない。
私はそういう人間なのだと、そろそろ自認しておこうと思う。

父はビール、息子はさんぴん茶
帰りは長男と、食事をしながら一杯飲めるお店に入った。
私はビールをいただき、つまみを楽しむ。
長男は、このあとも車の運転があるので、さんぴん茶を飲みながらご飯を食べる。
父はビール、息子はお茶。
飲み物は違っても、二人で今日の話をしながら過ごす時間は、なかなかよいものだった。
今日も、有名な観光地を次々と回ったわけではない。
三線の音を聴いて、沖縄そばを食べ、喫茶店でひと息つき、夜はエイサーを見た。
そして、その先々で、人の温かさや、暮らしの中にある沖縄に触れた気がする。
いやはや、今日もよい一日だった。
沖縄珍道中、4日目。
明日は、どんな一日になるだろうか。
また、リポートしたいと思う。